≪ずつと、追いかけてゐるの…≫ 遙かシリーズ二次創作ブログです。
2010/10/16 (Sat)02:42
以前に書いた、翡←幸っぽい話。
ただ幸鷹さんが休みの日に布団でごろごろする話です。
独りでぐるぐる考えているので、あまり明るい話ではないかもしれません。
もしよろしければ続きからどうぞ。
ただ幸鷹さんが休みの日に布団でごろごろする話です。
独りでぐるぐる考えているので、あまり明るい話ではないかもしれません。
もしよろしければ続きからどうぞ。
翡翠からメールの返信が来ない。
もうかれこれどれくらい待ったことだろう。
これは別に今に始まったことではないのだ。
だから別に平気、と言い切れるほど、自分は強くなかった。
それが何よりも忌々しい。
*或る春の男*
久しぶりの連休に、どうして私は布団に丸まっているんだろう。
他にももっとやるべきことは山のようにあって…有意義な過ごし方は山のようにあるのだ。そしてそれを自分はやれる。それは痛いほどわかっている。
ちょっと街に出れば娯楽に溢れている。
友人から貰った展覧会のチケットだってある。
急を要しはしないが、久しぶりに掃除に力を入れるのもいい。
仕事をしていたほうが余程マシなことをわかっているのに、どうして。
外は数日続いた夏のような気候が鳴りをひそめ、少々ひんやりとした空気が泳いでいるようだが、それは先日の夏日に比べての話。
長袖のシャツを羽織れば、何の問題もなく外出できるのだ。
昨夜天気予報を見るのを忘れたが、恐らく雨が降ることもないだろう。
こんなに空気は乾燥しているんだ。雨の気配など、微塵も感じられない。
…翡翠から返信が来ない。
枕に顔を埋めれば、当たり前だが、シャンプーの香りがする。
昨日から新しく使い始めたそれは、一昨日までのそれを打ち消すように香る。
特に拘りもないので行きつけのドラッグストアの特売品を買って来たのだが、別段悪くなかった。まぁ、今まで思ったより悪かったことがないので、自分はこれを評価するには不十分な条件か。
携帯が震えたが、この震え方はアラームだ。
平日であれば、私はどんなに寝不足でも飛び起きて、着替えを始めなくてはならない。
それが頭で分かっていても、一瞬反応してしまった自分を思わず嗤う。
無駄なまでに頭が冴えている。眠りたくて仕方ないのに。
手を伸ばして、電源ボタンを押してそれを止める。やめさせる。
寝床から出たくない。起き上がりたくない。
食欲もない。夢に逃げたい。
…あの男は今何をしているんだ。
というか、今は何の仕事をしているんだったか。
私が出会った時は物書きだった。最後に会った時は写真家だった。
あの風のような人間は、ただ気ままで。
ただ自由で、それに憧れたのかもしれない。
…やはり、私の傍を駆け抜けたのも、ただの気まぐれであったのか。
ああ、その精神に愛用のペン先で刻んでやりたい。
それは私のような不動物には、酷く残酷だということを。
「……ッ、なんて女々しい…」
そこまで考えてから、ふと吐き捨て、頭まで布団を被った。
それでもすぐに息苦しくなって、顔を出す。何をしているんだろう。
早く早く、夢に逃げたい。こんな自分は真っ平だ。
最近の夢見には触れないことにする。どんな悪夢でも、現よりはマシだ。
もう彼に連絡なぞ取らない。
そう思えて…そう思ったことは何度もあった。
だが、このアドレスを消し去ってしまうことは、どうしても出来なかった。
そしてほんの気まぐれのように彼が寄越す連絡をどこかで期待して、
そして案の定それがあればそれに舞い上がって、
懸命に言葉を選んだ返信に、何の反応もないことに無意識下で沈むのだ。
落ちた地面がどれほど痛いか。
沈んだ海がどれほど苦しいか。
わかっているのに。
薄ぼんやりとした感覚的憂鬱。
それに付き合うのがもう嫌になって、私はもう一度布団にもぐって、自らを固く抱き締めた。
今度は息苦しさなど感じなかった。何故だかは分からなかったが。
あまりにも深い自己嫌悪に幾許か感情を零せば、ゆるゆるとした微睡に、やっと身を任せることが出来た。
この上ない安堵に、微笑みさえ零れた。
向こう側に落ちる瞬間、また携帯が震えた。
それでも、私はもう手を伸ばすことはしなかった。
それは平日であれば私がどんなに疲れていても、家を出なくてはいけない時間であることを、それが告げているだけだと、痛いほど分かっていたから。
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